地震等に配慮したステンレス配管の高耐久性の確保に関する研究
Study on Functional Maintenance of Stainless Piping System after Massive Earthquake

(第1報) E-ディフェンスによる高層建物用配管の耐震性評価実験
Part 1 Evaluation of Seismic Performance of High-Rise Building by E-Defense Table
正会員 中野 和幸(日新製鋼)
Kazuyuki NAKANO(Nisshin Steel Co Ltd)
非会員 田辺 真行(日本ヴィクトリック)
Masayuki TANABE(Japan Victric Co. Ltd)
非会員 中島 淳(ノーラエンジニアリング)
Atsushi NAKAJIMA(Nowla Engineering Co.Ltd)
正会員 小池 道広(長谷工コーポレーション)
Michihiro KOIKE(Haseko Corporation)
正会員 坂上 恭助(明治大学)
Kyousuke SAKAUE(MEIJI University)
非会員 斉藤 大樹(建築研究所)
Taiki SAITO(Building Research Institute)

<Synopsis> For a building to remain functional after a massive earthquake, it must have a sound structure and in addition, lifelines such as its plumbing system need to be safeguarded.

To date, however, few investigations have comprehensively covered these two factors - response of the structure and damage to the plumbing system. Japan Stainless Steel Association (JSSA), in collaboration with Building Research Institute, conducted a quake resistance experiment on the world’s largest seismic simulator owned by National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention; E-defense) to verify earthquake-proof safety of the entire plumbing system including the support apparatuses.

The results are provided in this report.

はじめに

兵庫県三木市にある実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)において、独立行政法人防災科学技術研究所を中心に超高層建物の耐震性を検証する振動台実験が平成20年2月から3月にかけて実施された1)。本実験において、独立行政法人建築研究所は非構造部材や建築設備の耐震性評価を担当し、とくに配管設備の実験に当たっては、建築研究所を幹事とする「建築設備耐震実験検討会」を(社)空気調和・衛生工学会内に設置して、実験の計画・実施・取りまとめを共同で行うこととした。

本論文は、このうちステンレス協会が担当した給水配管の実験結果をとりまとめたものである。

実験は、高層建物の平均的な規模として地上21階、高さ80mの建物を想定し、1階から4階までを実規模の鉄骨造架構とし、その上に5階から21階までの揺れを反映するシステムを組み込み実施した。

表-2に組み込んだステンレス配管の概要を示す。試験体は,メイン管を100Φと50Φとし、各階の取り出し配管を25Φとした。

  1. 実験台と試験体の概要

    E-ディフェンス振動台の仕様を表-1に示す。


    写真-1 E-ディフェンスの外観

    表-1 E-ディフェンスの仕様
    振動台の大きさ 20m×15m
    最大搭載加重 12MN(1200tonf)
    加震方向 X,Y-水平 Z-垂直
    最大加速度 900cm/S2 1500cm/S2
    最大速度 200cm/S 70cm/S
    最大変位 ±100cm ±50cm
    管種 管径(mm) 継手種類 支持金物
    立て管 枝管
    一般配管用
    ステンレス鋼管
    SUS304TPD
    114.3 SAS322, SAS361, SAS363 Lアングル+
    Uボルト
    レベルバンド
    48.6 SAS322, SAS361

    ※SAS: ステンレス協会規格 / 322: メカニカル、361: ハウジング、363: 管端つば出し

    写真-2および写真-3に実験に使用した試験体とステンレス配管の取り付け状況を示す。

    写真-2 試験体
    写真-3 加震前のステンレス配管取り付け状況(2階)

    各階の取出し管25ΦにはSAS322(ステンレス協会規格)継手を用いた。また、各階の支持は、各階床上のアングル材とUボルトで固定した。

  2. 地震波入力条件

    本実験で用いた地震動を表-3に示す。
    設計用地震動として、レベル2のEl Centro波(最大速度0.5m/s)を採用し、首都圏に予測される長周期地震動として、気象庁波、東海地震を想定した東扇島波を、さらに東海・東南海地震を想定した三の丸波を採用した。

    表-3 実験に用いた地震動
    地振動 想定地震 マグニチュード 地震波の最大加速度
    気象庁波 関東地震 7.9 335ガル
    東扇島波 東海地震 8.0 190ガル
    三の丸波 東海・東南海地震 8.3 186ガル
    El Centro波 レベル2
    <参考> 東北大地震 9.0 2933ガル

    これらの速度応答スペクトルを図-1に示す

    図-1 応答スペクトル(水平方向)

    実験では、三の丸波を入力したとき、梁間方向の現場溶接接合部において、梁端下フランジが破断した。 図-2に、その破断時刻を示す。

    図-2 層間変形角の時刻暦波形(水平方向同時加振)
  3. 加震後の配管の調査結果
    1. 配管の変位

      Eディフェンス振動台実験は、気象庁波、El Centro波、東扇島波、三の丸波の入力順序で実施された。図-3に最大層間変形角分布を示す。

      図-3 最大層間変形角
    2. 管内圧力変動

      給水配管の実体に合わせ、管内の空気圧を0.2MPaに加圧し、圧力変動を求めた。結果を図-4、写真-4に示す。
      試験を行った50Su、100Suいずれの試験体も最大層間変位 1/66.7(躯体最大変位量144㎜)まで漏気はなかった。

      図-4 圧力変動測定結果
      写真-4 加震前後の配管内圧力の状況
    3. ステンレス配管の損傷状態

      東海・東南海地震を想定した三の丸波を入力した加震実験後、ステンレス配管の損傷状態の調査を行った。加震後の代表的な試験体の損傷状況を写真-5に示す。

      写真-5 加震後のステンレス配管取り付け状況(その1)
      写真-5 加震後のステンレス配管取り付け状況(その2)

      加震条件別に、ステンレス配管の加震後の損傷状態の評価結果のまとめを表-4に示す。

      表-4 試験体の損傷状態のまとめ
      加震条件の概要 試験体の評価結果
      最終準備、空圧0.6MPa 負荷し漏れ無しを確認。空圧を維持したままとした。  
      予備加震試験、最大はホワイトノイズ 270ガル 想定層間変位 1/300 100Su立て管の若干の持ち上がり確認、目立つ異常無く、気密試験による漏れ無し。
      1. 関東地震を想定した首都圏地震動

        (気象庁波)X方向-335ガル、Y方向-251ガル 想定層間変位 1/200

      2. 設計に用いられてきた地震動

        (EL Centro)レベル2 X方向-287ガル、Y方向-463ガル

      100Su立て管の持ち上がり確認、このため2階〜4階の枝管ソケット二次側配管の曲がり発生。気密試験による漏れ無し。

      50Suには、ハウジング継手の性能による変位吸収が見られる他、目立つ異常無し。気密試験による漏れ無し。

      東海地震を想定した首都圏地震動

      (東扇島波)X方向-190ガル、Y方向-138ガル 想定層間変位 1/100

      100Su立て管、2階〜4階の枝管の曲がりに変化無く、気密試験による漏れ無し。

      50Suには、目立つ異常無し。気密試験による漏れ無し。

      東南海地震を想定した名古屋の地震動

      (三の丸波)X方向-155ガル、Y方向-186ガル 想定層間変位 1/66.7

      100Suの立て管の持ち上がり、2階~4階の枝管の曲がりに変化無く、気密試験による漏れ無し。

      50Suには、目立つ異常無し。気密試験による漏れ無し。

      鋼構造部の梁溶接の破断確認有り、Y方向加震を2度実施
      加震条件は三の丸波 Y方向-186ガル

      100Suの立て管の更なる若干の持ち上がり有るが、2階〜4階の枝管ソケット二次側配管の曲がり(2階5°、3階及び4階7°)に目立つ変化無く、気密試験による漏れ無し。

      50Suには、ハウジング継手の性能による変位吸収に変化なく、目立つ異常無し。気密試験による漏れ無し。

  4. 加震実験後の回収試料の評価結果

    E-ディフェンスの加震実験に使用した継手について、実験終了後に回収し、試験後の継手の状態、漏れの有無、その他異常の有無の確認を行った。
    表-5に回収した試料の明細を示す。

    表-5 回収した継手の明細
    口径 継手の種類 調査数
    100Su ハウジング継手(リング) 1
    50Su ハウジング継手(リング) 1
    50Su 拡管式継手 5
    20Su 拡管式継手 5
    1. 拡管式継手

      E-ディフェンスで行われた耐震実験の返却試験体の代表的な外観を写真-6に示す。

      表-6 加震による異常の発生の有無(拡管式)
      状態 対象 状況
      分解前 製品外観 変形、緩み、その他異常なし。
      ナット緩み試験 バルブ、ナットの緩み無し。
      気密試験 0.6MPa、2分間で漏れなし。
      分解後 ゴムリング 気密に影響する変形などの異常なし
      ボルトナット 変形や永久伸びなどの異常なし
      拡管角部 僅かな擦れ確認。止水性に影響なし
    2. ハウジング継手

      E-ディフェンスで行われた耐震実験の返却試験体の代表的な外観を写真-7に示す。

      写真-7 回収したハウジング継手

      これらの試験体について、表-7示す試験を行い、加震にによる継手の異常の確認を行った。

      表-7 加震による異常の発生の有無(ハウジング式)
      状態 対象 状況
      分解前 製品外観 割れ、変形、緩み、その他異常なし。
      分解後 ハウジング 割れ、変形、摩擦痕などの異常なし
      ゴムリング 気密に影響する変形などの異常なし
      ボルトナット 変形や永久伸びなどの異常なし
      配管端部 変形やキズ、摩耗などの異常なし

      この結果、分解前後において、いずれのサンプルも異常がないことが確認された。

    3. 加震後の機能維持

      今回の実験で得られたステンレス配管システムの損傷状態を整理した結果を表-8および表-9に示す。

      1. 加震による不適合事象

        加震後の不適合事象から、損傷の程度、および、修復の可否について整理すると、ステンレス配管システムは、修復不要、ないしは、軽微な補修で機能維持可能なことが確認できた。

        表-8 加震による不適合事象
        不適合事象 配管 50Su 配管 100Su
        漏気の発生 なし なし
        継手の損傷 ガスケット材を含め
        異常なし。
        ガスケット材を含め
        異常なし。
        配管の変形 異常なし 枝管曲り発生(最大7°)
        貫通部の
        持ち上がり
        異常なし わずかに発生。
        表-9 損傷度と修復指数の関係を表す目安
        損傷の程度 漏気 今回の実験
        無損傷 修復不要 なし
        軽微損傷
        軽微損傷 軽微補修 なし
        小破 部分補修 接続部滲み  
        中破 補修 あり  
        大破 取替え  
        破壊  
  5. まとめ

    実大の建築構造物に取り付けられたステンレス配管について、Eディフェンスによる大規模地震後の機能維持について調査した。本研究で得られた結果を以下にまとめる。

    1. 東南海地震を想定した三の丸波の最終加震では、2階における最大層間変位角が1/66.7 に達したが、加震後、いずれの立て管にも機能維持に支障をきたす損傷はなかった。
    2. 漏れ試験では、加震前後で同じ圧力を示しており、いずれの配管も、漏気はなく、給水管としての機能は維持されていた。
    3. 実験終了後の解体検査においても、管および継手とも異常は認められなかった。
    4. 今後は、東北地方太平洋沖地震を想定した損傷限界について、検討を行う必要がある。

    併せて、大規模地震後の機能維持のための損傷評価と修復費用、および、期間について、今後の検討が必要である。

参考文献
  1. 防災科学技術研究所:首都直下型地震防災・減災プロジェクト成果報告書(平成19年度)、(2008.5)
  2. 消防庁:大規模地震に対応した消防用設備等のあり方に関する検討会報告書、(2011.3)
  3. 米沢千瑳夫:配管・配線工事と建築構造体の関係、空気調和・衛生工学、No81 第5号、(2008.5)